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TOP連載特集「The Evangelist」第四回 / 2019.11.05 掲載

ネットやテレビなどメディアで取り上げられているデジタル・トランスフォーメーション(Digital transformation(以下:DX))。
今回は「そもそもDXってなに?」「DXで何が変わるの?」「DXで必要なのはなに?」といった内容について説明させて頂きます。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)の概要

DXに関しては多くの論文や報告書等でも解説されていますが、中でもIT専門調査会社のIDC Japan 株式会社は、次のように定義しています。

“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスぺリエンスの変革を図ることで価値を創造し、競争上の優位性を確立すること”

※(出典)Japan IT Market 2018 Top 10 Predictions: デジタルネイティブ企業への変革-DXエコノミーにおいてイノベーションを飛躍的に拡大せよ,IDC Japan プレスリリース, 2017年12月14日

 

わかりやすく要約すると、「第3のプラットフォームを利用(活用)してITを中心とした業務へ移行して、企業競争の優位性を確立する。」内容となります。

 

DXの実現には「第3のプラットフォームにシフトし、最新のデジタル技術を活かして新たな製品やサービス、ビジネスモデル、バリューを創出すること」と言われており、これまでの「生産性の向上」といった役割から「イノベーションの創出」へとシフトされていき、今後は“ITとビジネスが対になって”イノベーションを起こすことが重要になると言われています。

「第3のプラットフォーム」に関する個別説明は、Evangelistで後日ご説明させて頂きます。

日本国内でDXが推奨される背景

日本政府を中心にDXが推奨される中で2018年9月に経済産業省の有識者による「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」という報告書が公表されました。

出典:「経済産業省のデジタル・トランスフォーメーション(DX)とは」https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/index.html

この報告書は、老朽化した既存の基幹システムがDX推進の前に立ちはだかる壁になるとし、2025年までにシステムの刷新を集中的に推進する必要があると強調しています。この課題が克服できなければ2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があると警鐘を鳴らしています(2025年の崖)。官公庁が民間企業のシステムの刷新に言及するという異例の報告書ですが、それだけ日本政府の危機感の強さを示しています。

DXで何が変わるの?

ITを中心に企業のビジネスや生活・サービスに変化をもたらし、あらゆる事がデジタル化されデータとして蓄積・加工される時代になっていきます。

DXは今まで企業が導入していた製品・サービスと違い「社会現象」であり、選択ではなく「どのように接していくか」「対応していくか」「時代に追随していくか」が重要となり、各企業の対応が求められます。

企業向け

個人向け

現状の課題と対策

DXを推進する中で新たなデジタル技術を採用していく為には、既存システムを適合するように見直す必要があります。

以下に主な課題について整理を行いました。

ITに関する課題だけではなく、課題解決を行うために経営面からの協力(投資・コミットメントなど)を得ると共に企業全体で取組みが必要となります。

項目 課題 対策
経営戦略の課題
  • デジタル化におけるビジョンの不足
  • 経営のコミットメント
  • 自社IT・ビジネス形態の棚卸を行い中長期的な計画を立案
  • 経営者からの強力なメッセージ発信とガバナンス
既存システムの現状課題
  • 技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等
  • 不十分なマネージメント
  • 個別最適化
  • スクラッチ開発の多用
  • サイバーセキュリティや災害など
  • 不必要なシステム(機能)の棚卸
  • システムのホワイトボックス化
  • 全体俯瞰したシステム作り
  • パッケージやサービスの有効利用
  • リスク管理の徹底
ユーザー企業における組織的な課題
  • 事業優先の最適化
  • コミュニケーション不足
  • 有識者の退職と人材不足
  • 1枚岩で業務を推進
  • 事業から企業へ価値を集約
  • 企業価値向上による人材の確保と教育
ユーザー企業とベンダー企業間の課題
  • ベンダー依存体質
  • 責任範囲の希薄化
  • ウォーターフォール開発
  • 自社システム意識の向上
  • 契約スキルの涵養
  • アジャイル開発
情報サービス産業の課題
  • 運用・メンテナンスコストの増大
  • 製品LCMへの依存
  • 技術者不足
  • 受託体質
  • クラウドの活用
  • スキルシフト
  • ビジネスモデルを考えられるパートナー体質

 

DXへの取り組み方

DX推進ガイドラインで記された、5つの「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と6つの「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」が挙げられています。

出典:「デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html

DX推進の必要要素

DXの推進に必要な要素として、「マインドセット」「推進・サポート体制」「人材・スキル」の3つを挙げています。これはDXで成果を上げるには継続性が求められ、新しい挑戦を続けられる環境が整っているかが重要ととらえています。

■マインドセット

経営戦略とそれを実現するためにDXが目指すべきものを踏まえて、以下のようなマインドセットで取り組むことが可能な環境や体制ができていること。

・仮説検証の繰返しプロセスの確立

・仮説検証の繰返しプロセスをスピーディに実行できること

・実行して目的を満たすかどうか評価する仕組み

■推進・サポート体制

経営戦略やビジョンの実現を念頭に、それを具現化する各事業部門におけるデータやデジタル技術の活用の取組を推進・サポートするDX推進部門の設置等、必要な体制が整えられていること。

■人材・スキル

DXの実行のために必要な人材の育成・確保を推進していること。

さいごに

昭和から平成・令和と時代が変化し、社会環境や価値観の変化に伴い、企業の事業や経営環境が従来とは比べ物にならないスピードで変化していく中で、これに即応していかなければ企業は生き残れない時代となりました。

そのために企業は旧来のアナログ的な業務プロセスからデジタルテクノロジーを活用した業務プロセスに変化していかなければなりません。

 

今後とも岡三情報システムのEvangelistを宜しくお願いします。

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